2019.05.21 13:48山奥のマヌーシュ「驚いたな。一段と上手くなった」 愉しげに掻き鳴らされるギターの音色を縫って、隣からは感嘆が漏れた。「表情も出てきたし、随分といい男になったじゃないか。これも良い相棒がいるからか」 そう言って肩をぶつける町田に、陽は肩頬だけを吊り上げた歪な笑みを返す。 郊外のキャンプ場に組まれた小さな特設ステージの客席で、ギター四本とコントラバス、それに...
2019.05.05 12:46月の調べ モンマルトルの夜が更けて、街は観光地から微かに顔色を変える。道端では女が男の袖を引き、安い金で身体を売って。バーの外では馬鹿騒ぎの若者が、道行く女を値踏みしている。 陽が眠り込んだ隙にアパートを抜け出した聖月は、煙草を咥えた口元から起用に舌打ちだけを投げた。「今日は随分とうるさいな」 その隣で同じように煙草を咥えるルイは、冷たい空気から...