2020.07.03 09:58『海の唄』 世界は突然に色を亡くす。悠然と手を広げていた未来が、目にも留まらぬ速さで過去に追い越され、散り散りになってしまう。棺の中で眠る母の顔は、死化粧がよく映える薄い顔をしていた。その死相を思い出し、機内の窓から雲海を眺めため息を吐く。涙はもう出ないけれど、現実を受け止めるにはまだ時間がかかりそうだ。 長いフライトを終え入国審査をパスし、少ない...